注:ネタバレだらけです!

◎Blu-rayで『オペラ座の怪人 25周年記念公演inロンドン』を。




「劇団四季のオペラ座の怪人は凄いらしい」という触れ込みは知っていたものの、
なぜかいままで食指が伸びなかったオペラ座。

やっと、ミュージカル初心者なんだから観なきゃでしょ!と思って
ふとジェラルド・バトラー様の映画版を観ましてね、

見事ハマりました。

この作品自体にハマりました。

そして舞台版を観るなら最高のものを、ということで、
プロデューサーのキャメロン・マッキントッシュが
「この作品は記念公演こそふさわしい」(大意)と評した、
“The★祭り”な、この25周年記念公演を観た次第です。 

さすが25周年記念公演とあって一流キャストが集められているそうで、
お歌も演技も、舞台の全てに非のつけどころがありません。
衣装もセットも圧巻です。

特に、ファントム役のラミン・カリムルーさんは衝撃的でした。
世界にはこんな素晴らしい俳優さんがいるのかと。
レ・ミゼラブルの映画化が決まった際、
世界中からアンジョルラスに!と支持を集めたと聞きましたが、全力で納得です。


この公演を観た後は、映画版含め四季のオペラ座も観れなくなっちゃうんじゃないか…
そんな心配すらしてしまう素晴らしさでした。

とにかく最初っから最後まで感動しっぱなしでしたが、なかでも心揺さぶられた場面の感想を。



ラミンさんのファントムを観ていると、
ジョニー・デップの『シザー・ハンズ』を思い出しました。
『シザー・ハンズ』はオペラ座の怪人がネタ元なんじゃないか?って思うくらい。

ずっと人目に触れず地下で暮らし、誰も愛さず、誰にも愛されず生きてきた人。
素晴らしいオペラを書く才能はあるのに、
触れただけで割れてしまいそうなガラスのハート。

狂人だけど、誰よりもピュア。
少年のまま大きくなってしまったんですね。
あまりに不器用で、愛するクリスティーヌにどう触れていいか分からなくて、
「Music of the night」で所在なげに手をふるふるさせているところなんかは、
思わず手を握ってあげたくなります。


初めから辿っていくと、
「The Phantom of the Opera」で、まず、うおーーーー!
ここは文句無しにカッコいい。
でも、ファントムの見どころはココじゃないの!と今なら言いたい。 

「Music of the night」で最後クリスティーヌが気を失ってしまう場面。
とっさにクリスをお姫様抱っこするのですが、
そのときの、一瞬戸惑った仕草、表情が、
「いやいや、アンタあれだけ自信満々に地下に連れてきとったやん!」
ってツッコミたくなるほど、可愛い、いとおしい!!!!
ずっとずっと欲しかった子犬が、突然胸に飛び込んできた子どものように戸惑っている。

嬉しさを分かち合える人が周りにいないまま育ったから、
気持ちをどう表現していいのか分からないんですよね。

仮面を付けると自信家なのに、内心は臆病。
周りから自分を否定された証でもある仮面に、
ファントム自身、いつのまにか頼っていたのかもしれません。
そんな二面性があったら、そりゃあクリスティーヌも翻弄されるよね…。


とはいえやっぱり筋金入りな狂人の彼。
気に入らないって理由で首吊りで何人も人を殺すわ、
プリマドンナに恥をかかせて公演めちゃくちゃにするわ、
劇場ガンガン破壊するわ、
(映画版では、等身大花嫁クリスティーヌフィギュアを制作してる上に、
 それを本人に嬉々として見せるわ)
やっていいコトとやっちゃいけないコトの見境無し!!

ただ、この公演のファントムには全ての行動の背景に、哀しみが見えて。
愛さずにはいられないんです。
So you don't have to lonely loney 守ってあげたくなります。 ※ユーミン

バトラー様の映画版だと、あまり弱さや哀れさを感じることができず、
情緒不安定な「狂人」の部分だけが強調されて見えてしまったのですが、
この公演で「哀しみ」という1本筋を通しているラミンさんは本当にスゴいです。

なんて優しくて哀しげな瞳。
顔の半分はマスクで覆われているというのに、訴えかけるものの多いこと。
この公演の魅力はファントムの「目」に尽きると思います。

「I Remember/Stranger Than You Dreamt It」で、
マスクを剥がされて怒り狂うファントム。 
でも、マスクを返してもらおうとするときに、
ハッと我にかえって、一瞬すっごく哀れな微笑み方をするんですよね。

ぎこちない微笑みの後ろに、「愛されなかったらどうしよう?」という気持ちが見えて。
このあたりは、映画版で子ども時代の描写を観ていたので余計にそう感じました。

愛しているから微笑むというよりは、
嫌われないように、自分が傷つかないように微笑んでいる感じ。
言い方は悪いけれど、媚びているような気さえする。

接し方が分からない。所在なげに顔をそらす仕草が本当にいじらしい。
同情してしまう。
孤独な心が彼をこうさせたんだとクリスが気づくシーンですよね。

クリスも、同情する心の演技がものスゴく上手い。
他のシーンもそうなのですが、俳優さんたちの、感情の移り変わりの演技が本当に上手いです。


さて話は一気に飛んじゃいますが、
「All I ask of you」の最後、遠くへ消えていくクリスとラウルの歌声に、耳を塞ぐ。
ここがたまらない。

すぐには塞がない。
クリスの美しい歌声をいつまでも聴いていたい、
でも重なっているのは、自分ではないラウルの声。
嫉妬、悲しさ、その葛藤が伝わってきて。 
その後の崩壊、暴走の引き金になっちゃう。

悲しみが怒りに変わる、感情の移り方が見事です。
見ているこっちが

「アンタたち二人もう歌わんでやってーーー!」

と言いたくなります…。


さらに話は進み、「ドン・ファンの勝利」で正体が暴かれた後、
発狂してクリスを連れ去ろうとするときの、
「Christine, why?」の叫び声も悲痛。
本当に、子どものようです。
「なんで君への愛が分からないんだ?」というより、
「どうして自分は愛されないんだ?」という気持ち。
まだここまでは「I Remember/Stranger Than You Dreamt It」の想いを引きずっているんですよね。

「Christine, why?」のひと言で、母にさえ愛されなかった辛さを爆発させている。 
ラミンさん、あなたどんだけ観客を泣かせれば気が済むの…?


そして、クライマックス。
「Down Once More.../Track Down This Murderer」で、
「あなたは一人じゃないわ」とクリスが言った後の目といったら。 

ここで既に、心が浄化されていることが分かります。
誰かに受け入れられて、愛されること。
母親にさえ忌み嫌われたファントムは、
ずっとずっとこのひと言が欲しかったんですよね。

クリスからの一度目のキスは、戸惑いを隠せない。
今まで愛されたことのなかった自分。こんなことはあり得ないという気持ち。
ふるふる震える手と、目が本当に印象的です。     

二度目のキスでは、顔に添えられたクリスの手に自分の手を重ねる。
異形と罵られ続けてきた、顔の傷に触れてくれた人。
この人が幸せになってくれれば、それでいい、と気持ちが緩んでいく。
でも、ラウルの縄を解く自分の心の変化についていけていない感じもする。


この二度のキスを受けた後、
指輪を返しにきたクリスに、少しだけ微笑むファントム。
「どうしたの、君はもうここには来てはいけないよ」というような。

冒頭の「I Remember/Stranger Than You Dreamt It」で、
マスクを返してもらうときの、自分を守る微笑みじゃなくて、
ここでは本当にクリスのことを思って微笑んでいる。
哀しいけれど澄み切った微笑みが切なすぎて辛すぎます。

堪えきれずに顔を歪めるクリスティーヌに、
「これでいいんだよ、お行き」と言うように「I love you.」と小さく頷く。


やっぱりクリスティーヌ戻ってやってお願い!!!!!


と思わずにはいられない…(※ストーリーが崩壊します)

愛する人は去ってしまったけれど、これで良かったんだと思う。
ヴェールを放り投げて、クリスティーヌが去って行った階段を見つめて。
どこかへ消え、END。


映画版では、冒頭で競り落としたオルゴールをクリスの墓前に添えて、
そこにはファントムからのバラがあって、という結末なのですが、
このときのラウルの

「俺、ファントムには一生勝てねえ…」

みたいな顔が超好き。大好き。

でも、クリスはファントムを愛してはいても恋はしていないというか。
ソウルメイトみたいな関係なのかなあ。
(ファントムは完全恋しちゃってますけども)

だからラウル的には余計に大変ですよ。別れたからって絆が切れることはない。
クリスはずっとファントムのことを考えていただろうし、
「歌」という二人だけの聖域に、ラウルは入り込めないのです。
このパターン、恋人としては一番辛いですよねえ。
「俺が忘れさせてやる!」って性格じゃないお坊ちゃまラウルだからこそ。


また別の記事で書こうと思いますが、
この作品は父親からの卒業という意味合いもあると感じました。
(別解釈版だとファントム=父親設定もあるんですよね?)

娘(クリス)を手放したくなくて箱入りにしちゃって、
でもいつかどこぞの馬の骨とも分からん若造(ラウル)がやってきて一方的に奪っていってさ…。

それと同時に、クリスの母性も感じたり。



『オペラ座の怪人』って、誰も悪役がいないですよね。
クリスのライバルである夫人はすごく嫌な人間くさい役ですが、
この公演の夫人は、最初こそクリスに嫉妬するものの、
「She is mad.」というセリフにすら、
この子はなんて大きなものを背負っているんだろう、という気持ちを感じる。
 
 何度も観れば観るほどやるせない気持ちになります。
 ファントムをもっと早く救ってあげられる方法があったのではないかと…。

 『オペラ座の怪人 25周年記念公演inロンドン』では、
最後にスーザン・サランドンサラ・ブライトマン(※9/22訂正。ご指摘ありがとうございました…恥ずかしい)やマイケル・クロフォード、
コルム・ウィルキンソン様などそうそうたる面々が登場して
「The★祭り」な雰囲気で終わるのですが、
(歴代ファントムに囲まれて歌うスーザンサラという、超モテモテな演出。笑)
この演出がなければ、ファントムが浮かばれなさすぎて落ち込んでました。

それくらい、ラミン・カリムルーさんのファントムは素晴らしかった。
一生かけて何度も観たい公演です。

 

★ここまでお読みくださり、ありがとうございました!

他の素敵ブログ様への旅立ちかたがた、ポチッとしていただけますと嬉しいです。


演劇・ミュージカル ブログランキングへ